3000文字チャレンジ【7】

7つの大罪、
またの名を、

"7つの死に至る罪"

について語ろう。


1つ目は高慢。

土曜日に友達が居ないのに、
ビッグサイズのポテチを買い、
独りでパーティ開けをした時の罪である。

いや俺友達とか要らねーし、
ビッグサイズいつも普通に食うし。
みたいな気持ちで寂しさを紛らわしながらもパーティ開けをしてしまうその姿を神は見ている。

なお、ポテチを購入する時に、
独りで食べるわけじゃない感を出す為に飲み物を2~3本購入すると罪が重くなる。

うすしお味を買ったのに、
やたら塩っからいと感じたなら、
それは涙の味である。


2つ目は物欲(貪欲)

土曜日に友達が居ないのに、
ビッグサイズのポテチだけでなく、
ピザのLサイズまでも買う時の罪である。

ドミノピザのテイクアウトで2枚目無料のキャンペーン中に独りでMサイズを2枚買った時も同様の罪となる。

別にいつもこのくらい食うし、
と思いながらも、
レジでLINEとかを見るふりをして、
さも友人と食べる様な素振りを見せるその姿を神は見ている。

なお、ピザ以外のサイドメニューを注文し、
僕これからパーティです感を出すと罪が重くなる。

2枚目のピザはスイーツ系にしたのに、
やたら塩っからいと感じたなら、
それは涙の味である。


3つ目は嫉妬。

土曜日に友達が居ないのに、
ビッグサイズのポテチと、
Lサイズのピザを買ったが食べきれず、
運動でもするかとイルミネーションのある公園に行ってしまう時の罪である。

カップルばかり居る事に気付き、
嫉妬の炎に燃えて死ぬ姿を神は見ている。

なお、ツイッターなどでイルミネーションの写真をアップし、

"彼女とデートなう"

などと嘘ツイートをすると罪は重くなる。


4つ目は怒り。

土曜日に友達が居ないのに、
イルミネーションのある場所に行き、

カップルばかりだと気付き、
死を迎えた後に奇跡の復活を遂げ、

嫉妬を通り越して怒りを覚え、
世界中に呪いをかけ、
リア充爆発しろと心で叫ぶ罪である。

そっとしてあげて欲しい。
あとリア充ってもう死語だと思う。


5つ目は色欲。

魂だけの状態で帰宅し、
部屋に残されたポテチとピザの食べ残しを見た時に、

もうAV見て寝ようと思った時の罪である。


6つ目は貪食。(暴食)

寝る前になんか甘い物が食べたいなと、
コンビニに出かけたら、
そこにもカップルが居て、
カップルが取ろうとしたコンビニスイーツを横から奪い取った時の罪である。


7つ目は怠惰。

日曜の昼頃に眠くなって昼寝をしたら、
夜寝れなくなって翌日の仕事に行くのが嫌になる時の罪である。


「ユニークな話ね」

僕が話し終わると彼女はそう言って笑っていた。

「最後の方は尻つぼみだったけど」

的確なツッコミだ。
3つ目くらいまでは思い付いたけど、
そこからは完全にネタ切れ。
惰性で語っただけだった。

彼女と会う時は決まってホテルの一室で、
情欲に溺れ、飽きるまで抱き合う。

でも恋人じゃない。
僕が会いたいと思った時に連絡し、
身体だけの、都合の良い女。

そんな関係が3年も続いている。

「貴方は何の罪?あ、分かった高慢でしょう」

「どうして?」

「私以外にもオンナが居るの、知ってるのよ?」

オンナ、と言う言葉を強調し、
皮肉っぽく笑う彼女の顔は、
大人びていて、無邪気だ。

「確かにね」

僕は彼女の指に口付け、
続けて言った。

「でも僕はさ……」

しかしそこから先は言えなかった。

本当は好きだなんて、
好きになってしまったなんて、
言えるわけも無い。

相手の都合も考えず、
自分勝手に情欲を貪る傲慢な僕が、
そんな事……。

それにきっと君だって、
僕に特別な感情なんて持ってないだろう。
そんな関係だ。

だから今更……。

胸を刺す様な後悔と、まどろみの中、
夜が更けていった。



翌朝、
まだ眠る彼女に気付かれない様、
そっと口付けし、
携帯電話を確認すると一通のメールが届いていた。

仕事仲間からだ。

『大変申し訳ありまてん。
本日は都合が悪くなってしまいました。
てへぺろりん』

今日の打ち合わせがキャンセルになった様だ。

『左様でつか。かちこまりまちた。
またご都合のよろしい時を教えて下ちゃい。
てへぺろりんりん』

スピーディに返信すると、
間もなくあちらからも返信が来た。

『ホンマ急に堪忍やで。
急なキャンセル堪忍やで』

『かめへんで。
ワイとお前の仲やないか。
ええんやで』

『ありがとうございます。
あとノリが良いのは大変嬉しいのですが、
てへぺろりんりんは少しウザいし引きました』

なんなんこいつ。

「おはよ。どうしたの?」

目を覚ました彼女は、
開口一番、そう言った。

「おはよう。仕事がキャンセルになってしまった」

「それは残念ね」

「……今日も一緒に居れるかい?」

期待はしてなかった。

いつも、朝になると別れてしまう関係だ。
今日もそんな朝になると思っていた。

「別に良いけど?」

僕は彼女の言葉を聞いた時、
どんな顔をしていただろうか。

嬉しさを隠し切れていただろうか。

「そ、そっか、じゃあさ……」

そうだ、たまにはデートをしよう。
恋人っぽいデートが良い。

「せっかくだから、デートしないか?」

僕の提案に彼女はとても驚いていた。
ほとんど身体だけの関係なのに、
そんな事を僕が言うなんて思ってもいなかったのだろう。

「ショッピングでも良いし、映画でも良い。なんなら遊園地でも」

「どうしたの?そんな…」

そこまで言いかけて彼女は言葉を変えた。

「ふふ、楽しみだわ」

その時の彼女は間違いなく笑顔だった。
たぶん、それは喜びの笑顔……だったと思う。

それから僕らは、
シャワーを浴びながら、
どこに行こうか話し合った。

決まった行き先はテーマパーク。
世界で一番有名な、夢の国と呼ばれる場所。



そこには沢山の恋人達が居た。
僕達も手を繋ぎ、
童心に帰ってはしゃいで回った。

ああ、こんな気分なんだな。

君と恋人になれたら、
こんな気分なんだ。

なんて嬉しい気持ちなんだろう。

なんて楽しい気持ちなんだろう。

君の笑顔は、
なんて素敵なんだろう。

下らないと思っていた。
恋人なんて、面倒で、
どうせ冷めていくものだと。

でも僕は今、
心から笑っている。

こんな気持ちになるなんて、
思ってもみなかった。

君の何が好きなのか分からない。
ただ、風に揺れる髪も、
吸い込まれそうな瞳も、
愛らしい唇も、
少し冷たい指先も、
全てが僕の心を奪う。

「どうしたの?そんなに見つめて」

君は不意に問いかける。

「い、いやなんでもないよ」

思わず照れてしまって顔を背けた。

「ねえ、さっきから携帯鳴ってるけど大丈夫?」

「え?本当に?」

携帯電話を見る事も忘れていた。
マナーモードにしていたとは言え、
気付きもしないなんて。

でもどうせ仕事の用事だろう。
今はそんな気分じゃない。

彼女はそんな僕を見抜いたかの様に促した。

「良いわよ、急用かもしれないじゃない」

少し寂しい気持ちになりながら、
渋々と携帯電話を見ると、
メールが何件か届いていた。

その中に、奴からのメールもあった。

『本日は大変申し訳ありませんでした。
急なキャンセルごめんでした。
お詫びと言ってはなんですが、
弊社の経営するホテルの宿泊券を送っちゃうぞ!』

ああ、今朝のキャンセルの件か。
お詫びとはまた律儀な奴だ。

添付ファイルを見ると、
特別優待と書かれたチケットがあった。

こいつが経営するホテルって……確かラブホテルか。

今日はそんな気分じゃないが、
お礼の返信だけはしておこう。

『マンモスうれぴーです。
有難く使わせて頂きますます』

『のりピー語!?ええ!?
なんで急に!?引くわー…』

なんなんこいつ。

ホテルか……いつもなら喜んで使うけど……。

「嫌な連絡だったの?」

僕の顔が陰っているのを察したのだろう。
彼女は心配そうな顔をしている。

「いや、今朝仕事がキャンセルになったお詫びに……」

なんとなく、言いたくなかった。

「お詫びに?」

しかし彼女は期待の眼差しで聞いてくる。
何か良いお詫びの品ならあやかりたいのだろう。

「あー…ホテルの宿泊券を貰ったよ」

「素敵じゃない。どこのホテル?」

「ここだよ」

彼女にホテルの画像を見せる。

「……え!?ここ行ってみたかった所!」

予想外の返答だった。
行ってみたいホテルがあるなんて聞いた事も無かったからだ。

でも彼女が喜ぶなら、嬉しい。
明日、奴に感謝のメールでも送ってやろう。

そんな気持ちで僕達は食事の後、
テーマパークを出てホテルへ向かった。



ホテルに着くと、
彼女が部屋を選び、
その部屋に入ると珍しい物が置いてあった。

「見て見て、十字架よ」

それはSMで使うのであろう十字の磔台。

「何これ、こういうの普通はXの形じゃないか?」

「あら、詳しいのね、経験済み?」

彼女はクスっと笑って見せた。

「いやいやいや、そんな趣味は無いよ」

「ふふ、ねえ、せっかくだから使ってみましょうよ」

ええ?と言う僕に構わず、
彼女は僕を十字の磔台に、
身動きも取れない程きつく縛っていく。

「なんだかキリストにでもなった気分だ」

「そう、その通りかもね」

「え?どう言う意味……」

その時、僕は背筋にゾッとしたものが走るのを感じた。

彼女はバッグから、
ナイフを取り出している。

「……おいおい、冗談だよな?」

そう言ってみたが、
冗談ではなさそうだ、

彼女は意を決した目をして、
僕に語りかけた。

「私ね、あなたが好きなの」

「でもあなたは、きっと私を好きにならないわ」

「深みにハマっていくのが分かる」

「最初はただ、お金が目当てだった」

「気付いたら好きになって3年も経っちゃった」

「苦しいの、他の女も抱いてると思うと」

「このままじゃ、ダメだって、ずっと思ってて」

「でも断ち切れなくて、だから」

そこまで言って、
僕の目を見つめた彼女は、
狂気とも、純粋とも取れる、
悲しそうな顔をしていた。

「僕も……僕も好きだよ、君の事」

偽りない気持ちだった。

でもそれは、
どんなに偽り無くても、
届かない言葉。

今までの事を考えれば、
届くわけがない。

身体だけの、都合の良い女。
朝になれば冷たく突き放す。
そうやって扱ってきた。

「ありがとう、嘘でも嬉しい」

彼女はそう言って、
大粒の涙を落とした。

嘘なんかじゃない。

嘘なんかじゃ……。

そう言おうとしたけど、
どんな言葉を集めてみても、
彼女の心を変える事は出来ないと思った。

彼女の目を見ていたら、
全ての言葉は無意味に思えた。

僕の罪だ。

君を追い詰めたのは、僕の罪。

どうしてこうなったのかなんて、
考えるまでも無い。

これから何をされるのか、
そんな恐怖よりも、
僕の心の中には、
さっきまでのデートの思い出が蘇っていた。

君は、

僕と恋人らしく過ごせただろうか。

嬉しかっただろうか。

楽しかっただろうか。

心から笑ってくれただろうか。

君が望んだ時間を過ごせただろうか。

ごめん。

ごめんなさい。

薄っぺらい謝罪の言葉が、

胸から込み上げて来るけれど、

伝わるわけなんて無いと、

喉を通る前に飲み込んでしまう。

「大好き」

彼女はそう言うとナイフを振り下ろした。

最初は、右腕。

痛みとも熱さとも言えない苦痛が、
僕の右腕に走る。

彼女は、再びナイフを振り下ろす。

左腕、

右脚、

左脚、

陰茎、

喉。

順番に切りつけた後、
僕の頬に手を当て、言った。

「あとは心臓」

「苦しい?ごめんね」

「でも人間ってそんな簡単に断ち切れないから、だから」

「切るの、切り刻んで、断ち切るの、私は、貴方を」

それが僕が聞いた彼女の最後の言葉。



七つ刀と書いて、切る、か。

一回くらい、切った所で、

人は、断ち切れないのかもしれない。

ひとつ、ひとつ、罪を、思いを、断ち切って欲しい。

愛しい君よ、どうか、切り刻んで、

僕の事など、どうか、断ち切って。



『ご利用ありがとうございました。
片付けはこちらでしますのでご心配なく。
それにしても愛とは罪深いものですね。
いえ、余計な話でした。
てへぺろりん』

私はメールを読み終えると、
彼の亡骸に口付けをした。

最後まで切る事が出来なかった彼の心臓を撫でながら。

"3000文字チャレンジ【7】" へのコメントを書く

お名前
メールアドレス
ホームページアドレス
コメント